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物語をたくさん読んでいると、ストーリーの良さだけでなく、そこに生きる登場人物たちの “会話の魅力” に心をつかまれる瞬間があります。
ツッコミ待ちの一言に思わず笑ったり、テンポよく返されるセリフに「そう来たか!」と胸が弾んだり、ふとこぼれた意外な言葉にキュンとしてしまったり。
キャラクター同士の距離が近づいたり離れたりしながら、軽やかなリズムで転がっていくやり取りは、読んでいるこちらまで楽しい気持ちにさせてくれます。
神去なあなあ日常 / 三浦 しをん
(徳間文庫)
神去村・林業・神事
高校卒業後、平野 勇気は担任に勝手に決められた就職先として、三重県の山奥・神去村へ向かいます。携帯も通じない不便な村で林業に従事し、豪快なヨキや個性豊かな村人たちと出会い、逃げ出したくなる日々を過ごしますが、自然の美しさや人の温かさに触れるうちに、少しずつ村の暮らしに魅力を感じ始めます。
勇気は思ったことをつい口にしてしまう素直さがあって、「こういう子、いるよね」とつい笑ってしまいます。村の人たちは言葉こそ少し荒めですが、根っこはとても優しくて、叱ったりからかったりしながらも、最後にはちゃんと受け止めてくれます。
都会育ちの勇気と、山で暮らす村人たちの感覚のズレもいい味になっていて、勇気がビビるたびに返ってくる飄々としたツッコミが絶妙です。林業の話も重たくなりすぎず、ふっと軽くなるところが魅力。
村人たちの言葉には、自然と共に生きる人ならではの大らかさがにじんでいて、会話から村のゆるやかな時間が流れ込んでくるように感じます。読み進めるうちに、「この村、ちょっと好きかも」と思えてきます。
キケン / 有川 浩
(角川文庫)
大学生・理系学部・青春
成南電気工科大学の「機械制御研究部」、通称キケンは、爆発騒ぎや奇抜な実験で学内に名を轟かせる危険なサークルです。新入生の元山と池谷は勢いで入部し、個性豊かな先輩たちに振り回されながら、全力で駆け抜ける日々を経験します。大人になった元山の回想を通して、笑いと友情に満ちた青春が描かれます。
理系男子が集まると、真面目な議論が気づけば脱線し、ちょっとした一言が思わぬ騒ぎにつながるなど、どこか微笑ましい空気が流れています。
さらに、元山のどこか懐かしい語り口には、「あの頃は本気でバカだったけれど、本当に楽しかった」という気持ちがにじみ、読み終えるころにはほろりと優しい余韻が残ります。
会話を通じて距離が少しずつ縮まっていく様子も心地よく、青春の空気をそのまま味わえます。
最後の晩ごはん / 椹野 道流
(角川文庫)
定食屋・幽霊・再出発
スキャンダルで芸能界を離れた若手俳優・五十嵐 海里が、芦屋の定食屋「ばんめし屋」で働きはじめます。店主の夏神に支えられつつ、海里は “人ならざる客” のために料理を作り、彼らの心残りに寄り添います。温かな料理と小さな奇跡が重なり、海里は自分の道を見つめ直していきます。
海里のまっすぐさや少し不器用なところがそのまま言葉ににじみ、まるで隣で話を聞いているような親しみやすさがあります。夏神のぶっきらぼうな返事にもふっと優しさがのぞき、短いやり取りの奥にある信頼が伝わってくるのが心地よいです。
そこに付喪神のロイドの飄々とした語りが加わることで、物語全体に軽やかな風が通り、三人の温度差がほどよく混ざり合います。
どの場面にも料理の香りや湯気が寄り添い、言葉の合間から気持ちがふわりと伝わってくる温かさがあります。
スロウハイツの神様 / 辻村 深月
(講談社文庫)
シェアハウス・クリエイター・おしゃれ
創作を志す若者たちが集うアパート「スロウハイツ」で、脚本家の赤羽 環を中心に穏やかな日々が続きます。しかし、新入居者の莉々亜の存在が少しずつ空気を乱し、住人たちの心に影を落とします。やがて過去の事件と現在が交差し、彼らの絆と創作への思いが試されていきます。
住人たちの本音がそのまま言葉になっていて、不安や嫉妬を抱えつつも、互いの才能を信じているからこそ、時には厳しく、時にはそっと寄り添うように声を掛け合います。
クリエイターならではの刺さる一言にドキリとしながらも、言葉の端々に漂うセンスやお洒落さが際立ちます。


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