2023年12月の読書記録【小説・漫画】

読書記録

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この記事は一か月間に読んだ本を簡単な感想と共に紹介しています。あくまで個人の意見なので作者の意図やあなたと違ったとしても気にしないでくださいね。

本選びの参考になれば嬉しいです。

 

幸腹な百貨店 / 秋川 滝美
(講談社文庫)

デパート・再建・食べ物

バブル世代の “気合い部長”・高橋 伝治と若手社員たちが、閉店寸前の老舗デパートを立て直すために奔走する、お仕事×グルメ小説です。

料理描写が妙に多いと思っていたら、題名は「幸福」ではなく「幸腹」。なるほど、お腹から満たす物語というわけですね。ただ、物語そのものに料理が必須かと言われると、やや結びつきの弱さも感じました。

展開は王道で、先が読める安心感があります。刺激よりも “ほっと一息” を求めているときには、ちょうどいいかもしれません。

 

空にピース / 藤岡 陽子
(単行本)

小学校・教師・格差社会

若い小学校教師・澤木 ひかりが “問題校” と呼ばれる小学校に赴任し、外国籍児童、日本語が読めない子、教室から飛び出してしまう子、給食だけを食べに来る子など、さまざまな事情を抱えた子どもたちと向き合います。

読み進めるほどに、子どもの問題行動の背景には、親の無理解や虐待、貧困といった深刻な家庭環境が大きく影響していることが突きつけられ、胸が締め付けられました。「親である以前に、人としてどうなのか」と憤りを覚える場面も多く、子どもが背負わされている理不尽さに言葉を失います。

同時に、教師という立場の難しさも痛感します。子どもと親の間で揺れ動き、時に板挟みになりながらも、澤木先生は “子どもを守る” という強い信念を決して曲げない。その姿勢と行動力には、ただただ頭が下がる思いでした。

本書で描かれる事例は、決してフィクションの中だけの話ではありません。少子化対策が叫ばれる一方で、生まれてきた命の尊厳を守る仕組みや支援がまだ十分ではない現実がある。子どもの心が歪み、壊れてしまってからでは遅い、その危機感を強く抱かされました。

教育、福祉、家庭環境、そして社会全体の課題が複雑に絡み合う中で、「子どもを守るために大人は何ができるのか」という問いを深く考えさせられます。

 

Artiste 1~9 / さもえど 太郎
(バンチコミックス)

フランス・レストラン・人間関係

気弱で自己主張が苦手な青年料理人・ジルベール。卓越した味覚を持ちながらも要領の悪さから皿洗いに甘んじていた彼が、シェフのカルマンメグレーに才能を見いだされ、新たな厨房で再出発することになります。多忙な日々の中で仲間たちと関わり合いながら、料理人としての腕だけでなく、人としての成長も描かれていいます。

気づけば巻数が増えていて購入をためらっていたのですが、もっと早く手に取ればよかったと心から思いました。

根暗で内向的な主人公が、仲間と向き合うことで少しずつ変わっていく、そんな大好きな展開が丁寧に描かれています。登場人物たちはみんな個性が強烈なのに、それぞれに悩みや弱さがあって、人間らしさがしっかり伝わってくるのも魅力です。

きっとこの作品は、何度でも読み返したくなる物語になると確信しています。

 

最後の秘境 東京藝大 1~4
/ 二宮 敦人・土岐 蔦子
(バンチコミックス)

実話・東京藝大・特殊な人々

東京藝術大学を舞台に、常識の枠を軽々と飛び越えていく学生たちの姿を追ったノンフィクション。著者・二宮 敦人さんが、藝大出身の彫刻家である奥さまを案内役に、ユニークすぎる授業や破天荒な制作風景、そして芸術に人生を賭ける若者たちの情熱と葛藤を丁寧に取材していきます。

登場するのは、「天才と変人は紙一重」という言葉がそのまま形になったような、強烈な個性を持つ人ばかり。気になってブラジャーウーマンさんを検索した流れで、文字を書くからくり人形を部品からすべて自作したという、工芸科漆芸専攻の佐野さんも調べてみたら、「あ、この作品、知ってる!」と声が出ました。画面越しでも伝わる圧倒的な熱量に、思わず見入ってしまいます。

そして何より驚いたのは、二宮さんの “素顔” でした。これまで読んできた彼の小説はどれも怖い印象が強かったので、奥さまとこんなに仲睦まじく、楽しそうに藝大を巡っている姿がとても意外で、なんだか嬉しくなってしまいました。

 

手のひらねこ 1 / 鷹野 久
(バンチコミックスコラル)

ファンタジー・妖精・猫

高校一年生のの前に、手のひらほどの大きさしかない幻の猫がふっと現れます。気に入った相手の家に棲みつくという不思議な猫は、いつの間にか彼の部屋に居つき、はその小さな存在を「ふわふわ」と名付けます。誰にも言えない秘密の同居生活が始まってから、の日常には少しずつ柔らかな変化が生まれていきます。

ふわふわと過ごす時間は、彼の心の奥に積もっていたざらつきをそっと撫でてくれるようで、読み返すたびにその優しさがじんわりと沁みてきます。

作者は以前にも『骨董猫屋』という猫漫画を手がけており、猫を深く愛する人ならではのまなざしが、この作品にも息づいています。派手さはないけれど、気づけばそっと心に寄り添ってくれます。

 

鹿の王 1~4 / 上橋 菜穂子
(角川文庫)

ファンタジー・黒狼病・人とのつながり

謎の病「黒狼熱」が蔓延する世界で、元戦士ヴァンは一人の少女ユナと出会い、彼女を守りながら病の真相へと迫っていきます。帝国同士の対立や医術者たちの葛藤、そして民族の誇りが複雑に絡み合う中、人々はそれぞれの運命に翻弄されていきます。

この作品はあまりにも有名で、読んだつもりになっていたのですが、実際に手に取ってみると想像していた物語とはまったく違っていました。追う者と追われる者の攻防劇だと思い込んでいたものの、実際にはもっと広く、もっと深かったです。

何より心に残るのは、人と人とのつながりの描き方です。孤独だったヴァンにはユナをはじめ、家族と呼べる存在が生まれます。ホッサルには同じ志を胸に病の究明に挑む仲間たちがいます。彼らが互いに支え合いながら前へ進んでいく姿に、胸が温かくなります。

壮大な世界観と、登場人物たちの繊細な心の揺れを丁寧に描き切る筆致に、改めて上橋 菜穂子さんの凄さを感じました。

 

Shrink~精神科ヨワイ~ 11
/ 月子・七海仁
(ヤングジャンプコミックス)

精神科医・解離性同一性障害・アンガーマネジメント

解離性同一性障害編の完結と、アンガーマネジメント編の開幕という二本柱で進む本巻は、シリーズの中でもとりわけ “心の深層” に触れています。

解離性同一性障害を抱える重森 一葉さんの物語では、多重人格の中に潜む凶暴性をもつ黒幕の存在が不穏さを漂わせていましたが、最終的に穏やかな形で決着がつき、胸の奥がふっと軽くなるような安堵を覚えました。

後半に登場するのは、怒りのコントロールに悩む50歳のサラリーマン・昭川さん。自分の中で湧き上がる怒りを抑えきれず、部下に感情的に当たってしまう姿は、残念ながら私自身にも思い当たるところがあります。

中堅として新人教育を任されることが多い立場ゆえ、怒鳴ることはなくても、心の中でイラついてしまう瞬間は確かにありました。長く同じ場所にいると、自分の中に “当たり前” や “常識” が知らず知らずのうちに固まっていき、それから外れる行動に対して批判的になってしまう。昭川さんの姿を通して、その危うさに改めて気づかされました。

だからこそ、自分の価値観に縛られすぎないよう、日々の中で意識していきたいと思います。

 

 

今月のおすすめは、

上橋 菜穂子さんの『鹿の王』です。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。また、来月の記事でお会いしましょう!


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