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この記事は一か月間に読んだ本を簡単な感想と共に紹介しています。あくまで個人の意見なので作者の意図やあなたと違ったとしても気にしないでくださいね。
本選びの参考になれば嬉しいです。
[今月の新着記事]
:小説
きのうのオレンジ / 藤岡 陽子
(集英社文庫)
闘病生活・人間関係・登山
三十三歳の遼賀は突然の胃癌宣告を受け、恐怖と絶望に沈みます。そんな折、岡山にいる弟・恭平から、十五歳で遭難した際に履いていたオレンジ色の登山靴が届きます。靴を手にした遼賀は、吹雪の中で必死に生をつかもうとしたあの日を思い出し、もう一度前を向こうと決意します。
集英社文庫『ナツイチ』の無料冊子で紹介されていて、「きっと誰かが死んでしまうんだろう」とためらいながらも、どうしても気になって手に取りました。確かに寂しさはあるけれど、それ以上に胸に広がる温かさがありました。
目立たなくても他人にそっと優しくできること。ささやかな幸せをちゃんと受け取れること。そして、病に負けまいと踏ん張る主人公の姿が、生きる意味を問いかけてきます。
聖女ヴィクトリアの考察 アウレスタ神殿物語 / 春間 タツキ
(角川文庫)
聖女・王宮・ミステリー
霊が視える聖女ヴィクトリアは、能力を疑われ神殿を追放されてしまいます。途方に暮れる彼女の前に現れたのは、辺境の騎士アドラス。「自分が皇子ではないと証明してほしい」という奇妙な依頼を受け、彼の故郷で出生の秘密を探ることに。やがて皇帝妃の遺した手紙や二十年前の皇子殺害事件が浮かび上がり、帝位継承を巡る陰謀に巻き込まれていくファンタジーです。
一見すると堅い題名ですが、物語自体はライトノベルみたいにテンポよく読み進められます。
ただ、聖女の主人公や正義感の強い騎士、愛嬌のある従者といったキャラクター造形が “王道すぎる” 印象もあり、もう一歩踏み込んだ個性があればもっと惹きつけられたかもしれません。
さんかく / 千早 茜
(祥伝社文庫)
大人・食事・三角関係
デザイナーの高村 夕香は、恋を手放したまま静かに暮らしています。かつて職場でバイトをしていた伊東 正和と偶然再会し、食の趣味が合うことから、夕香の住む京町家で同居を始めることになります。しかし、大学院で研究に没頭する恋人・華には、その同居をどうしても打ち明けられません。
良く言えば大人の恋愛、悪く言えばどこか煮え切らない関係が続きます。高村さんの作る美味しそうな料理が物語を支えてくれなければ、正直読みきれなかったかもしれません。
伊東くんは二人の女性の間で揺れ続け、読んでいるこちらが「しっかりしなさい」と声をかけたくなるほどです。その優柔不断さも含めて、三人の微妙な距離感が物語の空気をつくっているのだと感じました。
ほたるいしマジカルランド /
寺地 はるな
(ポプラ文庫)
遊園地・スタッフ・悩み
大阪北部の蛍石市にある老舗遊園地「ほたるいしマジカルランド」には、願いを叶えると噂のメリーゴーラウンドがあります。ここで働くのは、不器用ながらも悩みを抱えた人たちばかり。アトラクションや清掃、花の管理など、それぞれの持ち場でお客様の笑顔を支えています。
その中でも、おみやげ売り場の従業員から社長へと昇りつめた国村 市子さんの存在が印象的でした。従業員全員の名前を覚え、悩みがあればそっと寄り添おうとする姿勢は、自然と好感を抱かずにはいられません。
ほっこりと胸が温まるお話なのですが、いま職場で悩みを抱えている私には、なおさら深く沁みるものがありました。
みちづれの猫 / 唯川 恵
(集英社文庫)
女性・猫・短編集
人生の節目には、いつも猫が寄り添ってくれるのだと気づかされる短編集です。離婚や家族の死、叶わぬ恋など、傷ついた女性たちのそばに現れる猫たちが、静かに心を支えてくれます。
飼い猫、偶然出会った猫、ぬいぐるみ、幻想などの形態は違えど、主人公たちにとってかけがえのない存在に切ないけれど癒されました。
『ミャアの通り道』で、子どもたちが飼いたいと言い出したのに、結局は親に世話を押し付けてしまう場面には胸が痛みました。私自身も、犬で同じことをしてしまった経験があるので、なおさら身につまされます。
それでも、最初は飼うことに反対していた父親が、いつの間にかミャアに心を開き、愛情を注いでいたことに救われました。 猫が家族の隙間に入り込み、誰かの心をそっとほどいていく。そのささやかな奇跡が、この作品集の魅力なのだと思います。
:漫画
Shrink~精神科医ヨワイ~ 16 / 月子
(ヤングジャンプコミックス)
精神科医・統合失調症・親子
若年層に多く、100人に1人が発症するといわれる統合失調症。大学一年の桐生 悠貴も、ゼミでの人間関係をきっかけに不眠や倦怠感に悩み、母・知恵とともにひだまりクリニックを訪れます。弱井は悠貴の苦しみに寄り添い、回復への一歩を支えますが、妄想や幻聴による興奮が家族を巻き込んでいきます。
統合失調症は若い世代にも多く、決して遠い病ではありません。今回の主人公のように、ちょっとした人間関係のつまずきから心の調子を崩すことは、誰にでも起こり得ます。
「おかしいな」と感じた時こそ、ひとりで抱え込まず、早めに専門の医療につながることが大切です。早期の受診が、回復への確かな一歩になります。
大正學生愛妻家 3 / 粥川 すず
(コミックDAYSコミックス)
夫婦・身分の差・年齢の差
六年ぶりに再会し結婚した勇吾とふきは、ようやく互いの想いを確かめ合い、初めての夜を共に過ごします。穏やかな日々の中、ふきが英国の少女と流暢に英語で話す姿を見て、勇吾は思わず驚きます。知らなかった一面に触れるたび、ふきへの愛しさはますます深まっていきます。
三巻目は小冊子付きの特装版ということで、通常版の倍ほどの価格でしたが、後悔したくない気持ちが勝ち手に取りました。
勇吾の手相占いでは、戦争へ向かう不穏な時代でも長生きしそうだと示されており、ほっと胸をなでおろしました。
波うららかに、めおと日和 9 /
西香 はち
(コミックDAYSコミックス)
夫婦・海軍・暮らし
なつ美と瀧昌は自宅でおめかしをして、向き合いながら手を取り合う甘いダンスの時間を過ごします。一方、芙美子と深見もついに同居を始め、胸が高鳴る日々を迎えます。戦火の気配が近づく中で、かけがえのない日常のひとときがいっそう輝きを増していきます。
天然で穏やかな江端夫妻も魅力的ですが、素直になれず互いの気持ちを探り合う深見夫妻の繊細な心理戦にも心をつかまれます。
重い影が差す展開が続く作品だからこそ、今回はまるごと幸せに満ちた巻で、読後の温かさがひときわ沁みました。
星降る王国のニナ 17 / リカチ
(BE・LOVEコミックス)
ファンタジー・王宮・不思議な力
アズールは “獣の神” の力に呑まれないよう必死に抗いながら、ニナや大切なものを守ろうとします。一方、ニナはバステア城崩壊の知らせを受け、ガルガダへ向かいます。そこでついにアズールと再会しますが、この再会は二人の運命を大きく分ける転機となっていきます。
やっと運命の歯車が本格的に動き出しました。 ここから先はきっと波乱続きなんだろうけど、これまで一緒に旅してきた仲間たちの絆があるなら、みんなにちゃんと幸せな未来が来て欲しいと思います。

今月のおすすめは、
藤岡 陽子さんの『きのうのオレンジ』です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。また、来月の記事でお会いしましょう!






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