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仕事って、好きな日もあれば、気持ちが重い日もあります。 朝の電車で「今日はちょっとしんどいな…」と思うこともあるし、 ふとした瞬間に、すっとやる気が戻ることだってあります。
そんな揺れる気持ちのときに読むお仕事小説は、 気分転換の散歩みたいに、頭の中をゆるめてくれる存在です。 物語の中で働く人たちの姿に触れると、 「あ、こういう働き方もあるんだ」と 自分の中の視点がひとつ増えることがあります。
今日は、読み終えると自然と前向きになれる5冊をまとめました。
本日は、お日柄もよく / 原田 マハ
言葉に向き合う日々のはじまり
会社員の二ノ宮 こと葉は、想いを寄せていた幼なじみ・厚志の結婚式に、重たい心を抱えたまま出席します。
そこで耳にしたのが、伝説のスピーチライター・久遠 久美の祝辞。その言葉の力に胸を揺さぶられたこと葉は、思わず弟子入りを志願します。
久美のもとで言葉と真剣に向き合ううちに、こと葉は野党のスピーチライターに抜擢されます。懸命に仕事へ向き合う日々は学びの連続で、彼女の誠実さが物語をまっすぐ支えていきます。
表紙からは結婚式をめぐる物語を想像しますが、実際は本格的なお仕事小説。政治が絡む場面もありますが、こと葉の言葉への姿勢が清々しく、読み終えるころには続編を求めたくなるほどです。
人前で話す機会がある方にはとくにおすすめ。スピーチの組み立て方が丁寧に描かれていて、「自分の言葉をどう届けるか」という問いに、そっとヒントをくれる一冊です。
こんな人にぴったり
- 言葉の力に背中を押してほしい人
- 人前で話す機会があり、伝え方を整えたい人
- まっすぐ仕事に向き合う主人公から元気をもらいたい人
風のマジム / 原田 マハ
仲間とつくる、ひとつの挑戦のかたち
こちらも原田マハさんの作品。契約社員から女社長へ―実話をもとにした奮闘物語です。
琉球アイコム沖縄支店で働く28歳のまじむは、南大東島のサトウキビで純沖縄産ラム酒を造る夢に挑みます。 島へ渡り、飛行場跡地を工場にし、伝説の醸造家を口説き落とすなど、体当たりで道を切り開いていきます。
『本日は、お日柄もよく』が “ひとりで極める” 世界だとしたら、 『風のマジム』は仲間と力を合わせて前へ進んでいく物語。 沖縄の空気がふわりと漂い、まじむの柔らかい語り口に何度も癒されました。
ゆるやかな時間が流れているのに、登場人物それぞれの想いはしっかり芯を持っていて、読後にはほのかな勇気が残ります。
こんな人にぴったり
- 仲間と一緒に挑戦する物語に弱い人
- 沖縄のゆるやかな空気にふっと癒されたい人
- ひたむきに道を切り開く主人公を応援したくなる人
県庁おもてなし課 / 有川 浩
高知の景色と、人の心づかいに触れる物語
観光ブームの追い風を受けて、高知県庁は観光促進のために「おもてなし課」を新設します。
やる気はあるのに空回りしがちな若手職員・掛水は、人気作家の吉門から「お役所体質だ」と指摘されて奮起。
発想豊かなアルバイト職員・多紀とともに、本当の“おもてなし”を探していきます。
物語の中では、高知県の自然や名所が丁寧に描かれていて、まるでガイドブックを読んでいるような楽しさがあります。
「ここなら行ってみたいな」と思わせる場所がいくつも散りばめられていて、とくに多紀の視点には強く共感。彼らのまっすぐな熱意が、ページをめくるたびに伝わってきます。
その一方で、浮かび上がる“お役所の課題”もあり、理想と現実のギャップが物語にほどよい苦みを添えています。観光への情熱と、組織が抱える問題。その両方が描かれているからこそ、作品に深みが生まれています。
こんな人にぴったり
- 地方の景色や人の温度を感じる物語が好きな人
- 組織の“理想と現実”に共感しながら読みたい人
- まっすぐな若手の奮闘に元気をもらいたい人
舟を編む / 三浦 しをん
辞書という“舟”を編む人たちの時間
玄武書房の営業部で変人扱いされていた馬締光也は、新辞書『大渡海』の編纂メンバーに抜擢されます。 個性豊かな仲間とともに言葉の世界へ没頭し、絆を育みながら辞書完成を目指します。
タイトルの『舟を編む』に首をかしげたくなりますが、その正体は “辞書作り”。 長い年月をかけて言葉を集め、一冊の辞書という大きな舟を編み上げていく日々は、地味でありながら胸を打ちます。
老国語学者・松本先生が女子高生の会話をそっとメモする場面は、まさに “言葉を採集する” 瞬間。 辞書作りの原点を感じさせてくれる、やさしい場面です。
こんな人にぴったり
- コツコツ積み重ねる仕事に心を寄せたい人
- 言葉の世界に浸りたい人
- 個性豊かな仲間との絆にほっとしたい人
パラ・スター / 阿部 暁子
競技用車いすを作る手のぬくもり
山路百花の夢は、親友で車いすテニス選手の宝良のために、最高の競技用車いすを作ること。 日本代表として活躍する宝良に比べ、未熟さを痛感する百花は、初めて顧客面談を任され、少しずつ成長していきます。
明るくて前向きで押しが強い百花は、営業や企画開発が似合いそうなのに、車椅子を作る技術職を目指します。
教育係の小田切が、選手に合わせて設計図を引き、部品を1ミリ単位で整えていく細やかさに憧れ、その域に追いつきたいと願う百花のひたむきさに、自然とエールを送りたくなる物語です。
競技用車いすの世界を知らない読者にもわかりやすく、その職人技に、つくり手の誇りを感じます。
こんな人にぴったり
- 技術職の細やかな仕事ぶりに胸が熱くなる人
- ひたむきに成長していく主人公を応援したい人
- 車いすスポーツの世界をやさしく知りたい人
おしまいのひとこと
働く気持ちは日によって変わりますが、 こういう物語を読むと、自分の仕事にもそっと視点が増えることがあります。
今日の5冊のどれかが、 読んだ人の「よし、今日はこれでいこう」につながったらうれしいです。

