2023年10月の読書記録*大好きの予感『猫と紳士とティールーム』

読書記録

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この記事は一か月間に読んだ本を簡単な感想と共に紹介しています。あくまで個人の意見なので作者の意図やあなたと違ったとしても気にしないでくださいね。

本選びの参考になれば嬉しいです。

 

てるてるあした / 加納 朋子
(幻冬舎文庫)

シリーズ・人間関係・感動

15歳の雨宮 照代は、両親の残した借金のため進学をあきらめ、夜逃げ同然で佐々良の町へ向かいます。両親と別れ、遠縁にあたる鈴木 久代の家で暮らし始めたその夜、母から渡された携帯電話に一通のメールが届きます。

『ささらシリーズ』第2弾。第1弾の『ささらさや』は原作ではなく、ずいぶん前に碧也 ぴんくさんの漫画で読んでいました。今回の作品は、登場人物の背景を知っているほうがより深く楽しめると感じます。

正直に言えば、序盤の照代の愚痴や他人への不満が多く、読んでいて少し疲れてしまいましたが、後半のさらに後半で伏線が回収され、物語が一気に動き出します。それに合わせて照代自身も変わり始め、思わず涙がこぼれそうになりました。

彼女が変わるきっかけを、もう少し早い段階で与えてほしかったという気持ちもありますが、その分ラストの変化が胸に響きました。

 

勤労クレシェンド 1~2 / 小山 愛子
(ビッグコミックス) ※再読

シュール・笑い・駅中のカフェ

駅構内の喫茶店で働く眼鏡男子・恵須野青年は、一見クールなイケメンですが、常にお客様を思うあまり思考が薫り高く暴走しがちです。何気ない会話から「クレシェンド」の名の通り徐々に強く思考の迷路へ突入していきます。

何度も読み返しているお気に入りの作品です。

現実とはまったく嚙み合っていない主人公の言動が、どこか切なくもあり、思わずクスッと笑ってしまうシュールさがあります。

1話が短くてサクッと読めるので、「眠いけど何か読みたい…でも重いのは無理…」というときにぴったり。ただ、読み始めると止まらなくなるのが唯一の難点です。

 

東京すみっこごはん 雷親父とオムライス / 成田 名璃子
(光文社文庫)

連作短編・料理・多様化

年齢も境遇も異なる人々が集まり、手作り料理を囲む “共同台所すみっこごはん” には、今日も温かな時間が流れます。夢に迷う専門学校生や妻を亡くした老人、小学生などが支え合う場所ですが、再開発の噂で存続の危機に陥ります。

『東京すみっこごはん』シリーズの2作目を読みました。

前作の面々に加えて新しい登場人物も現れ、今回も一見ほのぼのとした空気の中に、意外なほど重みのあるテーマが潜んでいます。

料理ものの物語というと、その場の温かさや、過去の悩みがふっとほどけるような軽やかな展開を思い浮かべます。もちろん、そうした作品も大好きです。

けれど、このシリーズは “今この瞬間” だけで終わらず、登場人物たちの未来へと静かに繋がっていく余韻があります。読み終えたあと、彼や彼女がこれからどんなふうに生きていくのか、つい想像してしまうのです。

 

猫と紳士とティールーム 1~2
/ モリコ ロス
(ゼノンコミックス)

紅茶専門店・イケおじ・猫

街の片隅で紅茶専門店を営む店主・は、極度の人見知りで、心を開くのは愛猫キームン君と紅茶だけです。ぎこちないながらも誠実なおもてなしと一杯の紅茶が、訪れる少し疲れた人々の心をそっと癒やしていきます。

この漫画は、最初は濃密な線が目に飛び込んでくるので、「少し重たい世界なのかな」と身構えていました。けれど、ページをめくるたびにその印象はやわらかくほどけていきます。

さんやキームンくんをはじめとする登場人物たちの奥行きや温度を支えているのは、まさにこの密度のある絵だからこそ。読み進めるほどに、「この世界は、この絵でなければ成立しない」と確信するようになります。

英国調の落ち着いた店内の空気、メニューに並ぶ「本日の紅茶」の静かな佇まい。その一つひとつが丁寧に描かれていて、ページを眺めるだけで紅茶の香りがふわりと立ちのぼるようです。

さんがお客に合わせて選ぶ紅茶はもちろん、毎回変わるティーポットやティーカップも、繊細だったり可愛らしかったりと、見ているだけで心がゆるみます。

紅茶専門店「カメリアティールーム」。紅茶2杯とお菓子付きで700円という、思わず経営を心配してしまうほどの良心価格。こんなお店が本当にあったら、きっと通わずにはいられない!そんな気持ちにさせてくれる作品です。

 

恋するお菓子とエトランジェ 1~2
/ サノ マリナ
(クリエコミックス)

恋愛・お菓子・フランス人

お菓子メーカー勤務の佐藤 あみは、仕事も恋愛も冴えず、少女漫画に癒やしを求めています。ある日、コンビニで出会ったフランス人のジローとお菓子をきっかけに急接近し、一緒に働くことになって胸が高鳴ってしまいます。

この漫画の魅力は、何と言ってもジローさんの存在に尽きます。

厳しさと優しさを併せ持ち、行動はいつも迅速でスマート。ふと見せる笑顔には子供っぽさがのぞいて、自然に頬へキスなんてしてくるものだから、心臓がもたないほどです。

そして極めつけはサスペンダー。あれをあんなに格好よく着こなせるなんて、もう只者じゃありません。

気づけば「好きになっちゃうじゃないですか…!」と心の中で叫んでしまうほど、魅力が詰まったキャラクターです。

 

マイ ベイカー 1~2 / らくだ
(ジーンLINEコミックス)

パン屋・女性店主・年下のバイト

小さな人気店ベーカリーミミィの小岩店長は、ちっちゃくても元気いっぱいに店を切り盛りしています。新人バイトのくんは寡黙で真面目ですが、どこか秘密を抱えているようで。パンの香りに包まれた店で、二人の距離が少しずつ近づいていきます。

パン屋でのエピソードを深く掘り下げた展開を期待していたため、恋愛寄りの構成にはやや物足りなさが残りました。

とはいえ、これは私自身の好みによるものなので、仕事と恋愛のバランスを楽しみたい方にはおすすめできる作品です。

 

わたしをみつけて / 中脇 初枝
(ポプラ文庫)

児童養護施設・准看護師・出会い

施設で育った弥生は、准看護師として働く今の職場を大切に思っています。問題のある医師がいても異議を唱えないのは、せっかく得た居場所を失いたくないからです。「いい子」でいなければならないという思いに縛られながら、弥生は自分の声を押し殺し、日々を過ごしていきます。

こちらは前作『きみはいい子』と同じ町を舞台にした作品です。

「いい子とは、誰かにとって都合のいい子のこと」という言葉をどこかで耳にしたことがあります。けれど、よく考えてみれば、私たちは誰もが多かれ少なかれ“いい子”を演じているのではないでしょうか。

私自身、上司に対して思うところがあっても、後々面倒になるのが嫌で笑ってやり過ごすことが少なくありません。だからこそ、彼女が“捨て子だから”という特別な理由ではなく、「大抵の人がそうなんだよ」と伝えたくなるのです。

そんな中で、間違いを指摘し、職場の意識を変えようと行動する藤堂師長の姿は本当に頼もしく映ります。また、優しい患者である菊池さんとの出会いも、彼女にとって大きな救いだったように思います。

結局この作品が描き出す問題の核心は、現実には存在してほしくないようなモラルの低い医師たち、そしてそれを許してしまう病院側のずさんな管理体制にあります。そこに光を当てることで、作品は「本当に守られるべきものは何か」を問いかけているのだと感じました。

 

エミリの小さな包丁 / 森沢 明夫
(角川文庫)

失恋・祖父との同居・料理

恋人も仕事も居場所も失い、行き場をなくした25歳のエミリは、10年以上疎遠だった祖父の家に身を寄せます。荒んだ心で人の優しさを受け入れられない彼女でしたが、黙々と料理を整える祖父の姿に触れるうちに少しずつ変わり始めます。食や人との向き合い方がほぐれ、周囲や親との関係に一歩踏み出そうと思い始めます。

舞台の龍浦は、風鈴の音が響きそうなほど静かな、どこか懐かしい漁村です。そんな場所で描かれるエミリ大三おじいちゃんの距離感が、とても温かくて好きでした。

物語は料理を中心に進みますが、エミリが前を向くためには、朝の散歩や風鈴作り、人との触れ合いなど、龍浦での暮らしすべてが大切な要素だったのだと感じました。

森沢 明夫さんの作品を読むのは久しぶりでしたが、変わらず優しく寄り添ってくれる物語で、心がほっとしました。

 

赤ちゃんと教授―乳母猫より愛をこめて / 松田 志乃ぶ
(集英社オレンジ文庫

ベビーシッター・大学教授・謎解き

職も家も貯金も失った超有能ベビーシッターの鮎子は、公園で暴走するベビーカーを救ったことから大学教授・島津 伊織に雇われます。家事も任せられると喜ぶ鮎子ですが、教授からはまさかの “婚約者役” も依頼され、豪華マンションで同居しつつベビーシッター兼婚約者として奮闘することになります。

オレンジ文庫らしい魅力的なハイスペック男性に、思わず “こういうのが好き” が詰まっていてワクワクしました。それなのに、二人の関係が最後まで恋愛に発展せず、雇用主とシッターの距離感のまま終わってしまったのが残念。もっと胸が高鳴るような展開を期待してしまいました。

 

 

今月のおすすめは、

モリコ ロスさんの『猫と紳士とティールーム』です。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。また、来月の記事でお会いしましょう!

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