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この記事は一か月間に読んだ本を簡単な感想と共に紹介しています。あくまで個人の意見なので作者の意図やあなたと違ったとしても気にしないでくださいね。
本選びの参考になれば嬉しいです。
:小説
雨降る森の犬 / 馳 星周
(集英社文庫)
中学生・人間関係・犬
父を亡くし、母の恋人関係に傷ついた中学生の雨音は、長野の立科で暮らす伯父のもとへ預けられます。そこで出会ったのは、人に懐かない大型犬ワルテルと、心に孤独を抱える高校生の正樹。最初は心を閉ざしていた雨音ですが、雄大な自然の中でワルテルと過ごす日々、正樹との交流を通して、少しずつ自分を取り戻していきます。
さらっとした文章だけれど、読ませる底力みたいなものを感じました。作者の馳 星周さんがバーニーズ・マウンテン・ドッグを飼っていることもあり、犬の魅力が詰まっています。そのぶん、最期の別れのシーンでは涙が止まりませんでした。
海とジイ / 藤岡 陽子
(小学館文庫)
おじいさん・人生・再出発
いじめで不登校になった小学四年生、70代後半の老医師と、20年以上支えてきた48歳の看護師、怪我で陸上人生が崩れ、進路に迷う高校生。美しくも厳しい瀬戸内の島を舞台に、三人三様の “ジイ” が、長い人生で得た強さと優しさを若い世代へ手渡します。
読み始めた瞬間、「これは絶対に面白い」と確信しましたが、その予感は最後まで揺らぎませんでした。
タイプの異なる三人のお祖父さんの人生を追ううちに、胸の奥がじんわり温まり、自然と前を向く力をもらえます。どのおじいさんも自分の軸をしっかり持っていて、とても格好良かったです。
花守家に、ただいま。/沖田 円
(ポプラ文庫)
女性・家族・虐待
桜子は夫・透を亡くし、渥美半島の古民家で義母と穏やかに暮らしています。そこへ、夫の前妻の子を名乗る少女が現れ、三人の関係は揺れ動きます。血の繋がりに迷いながらも、四季の暮らしを通して家族の形を見つめ直していきます。
沖田 円さんは最近になって好きになった作家さんで、読みやすい文章のなかにしっかりとした温かさが残ります。
この作品では毒親の存在が胸に引っかかりつつも、家のどこかから「ただいま」「おかえり」と聞こえてきそうな、やわらかな気配がじんわりと広がります。
晴れたらいいね / 藤岡 陽子
(光文社文庫)
戦争・看護婦・タイムスリップ
看護師の紗穂は夜勤中の地震で意識を失い、目を覚ますと1944年のマニラにいました。さっきまで病室にいた老患者の若き日の姿になっており、突然、戦時下の従軍看護婦として生きることになります。
理不尽や恐怖が押し寄せる中でも、沙穂は持ち前の明るさを失わず、仲間と支え合いながら命と向き合い続けます。
戦時下へのタイムスリップという重い題材で、読んでいて胸が苦しくなる場面も多いのですが、物語の随所に “ささやかな希望” が差し込まれていて、最後まで読み切ることができました。
読んでいるあいだ、伊吹 有喜さんの『彼方の友へ』が、ふと重なりました。看護婦と編集者という立場の違いはあっても、どんな時代でも守るべきもののために立ち上がる女性たちの姿が、同じように力強く、勇敢に描かれているからだと思います。
:漫画
Shrink~精神科医ヨワイ~ 18 / 月子
(ヤングジャンプコミックス)
精神科医・がん・悩み
並木 紬は突然の子宮体がん告知に心が追いつかず、治療選択にも迷い続ける。精神科医の弱井は悲しむ時間の大切さを伝え、紬の不安に寄り添うが、彼女は次第に “受け入れてくれるAI” に依存していきます。
同じ女性として紬に自分を重ねると、本当に怖くなります。死の恐怖だけじゃなく、これまで当たり前にできていたことや、思い描いていた未来を選べなくなることのつらさが胸に迫ります。
この作品には、一見すると “聖人君子みたいで現実味がないのでは” と思うほど強い女性が登場します。でも読み進めるほど、彼女は決して作り物ではなく、本当に強くて、痛みを抱えながらも前を向く人なんだと分かりました。
スキップとローファー 13 / 高松 美咲
(アフタヌーンコミックス)
高校生・青春・友達
文化祭後の “志摩くんハグ事件” から始まり、美津未は生徒会を引退して受験勉強に集中します。志摩くんは美津未への想いが抑えきれず揺れ続け、ミカの恋や迎井くんの変化など、周囲の恋模様も一気に動き出す冬に。初詣までの時間の中で、それぞれの関係が少しずつ深まっていきます。
受験が近づくと、どれだけ仲が良くても、ふっと “見えない壁” が生まれる瞬間があります。進路も勉強のペースも違うだけなのに、同じ場所にいられなくなるもどかしさ。
ずっと続くと思っていた関係が、環境の変化とともに自然と離れてしまうことがあると知っているからこそ、その距離の変化が胸にやさしく痛みます。

今月のおすすめは、
沖田 円さんの『花守家に、ただいま。』です。

