※本ページにはプロモーションが含まれています。
この記事は一か月間に読んだ本を簡単な感想と共に紹介しています。あくまで個人の意見なので作者の意図やあなたと違ったとしても気にしないでくださいね。
本選びの参考になれば嬉しいです。
:小説
犬がいた季節 / 伊吹 有喜
(双葉文庫)
犬・高校生・青春
1988年の夏、白い子犬コーシローが高校に迷い込み、生徒たちと共に歳月を重ねてゆきます。優しい少女への想いを胸に、昭和から令和へと移りゆく時代の中で、18歳たちの迷いと決意を静かに見守り続けます。
読んでいるあいだは、時代の波に揺れる若者たちがどのように感じ、どう行動していくのかに心を奪われていました。けれど、読み終えた瞬間、物語はそっと形を変え、まるで一篇の恋愛小説のようでした。
私は単行本で読みましたが、いつもの癖で最初にカバーを外すと、そこには二人の女性が描かれていました。その絵を誰が描いたのか、どんな意図が込められているのか、想像を巡らせるだけで物語の奥行きがさらに広がっていくようでした。
カレーの時間 / 寺地 はるな
(実業之日本社文庫)
祖父・孫・同居
偏屈な祖父と暮らすことになった桐矢は、昭和の高度成長期にレトルトカレーの営業として生きた祖父の過去に触れ、カレーを囲むひとときだけ心を通わせていきます。半世紀ものあいだ祖父が抱えてきた秘密が明かされるにつれ、人生のままならなさと温かな愛しさがじんわりと広がります。
繊細で潔癖、穏やかな日々を望む桐矢の視点で語られるせいか、当初は祖父がどうにも苦手でした。けれど、彼の歩んできた道のりや抱えてきた思いに触れるうち、好きにはなれなくても、嫌いなまま終わらなくて良かったと思えます。
『カレーの時間』というタイトルどおり、レトルトカレーから桐矢のアレンジ料理まで、ページをめくるたびにカレーが登場。読んでいるだけで胸やけしそうになって「もう、いい…」ってなるのに、その週末に私もカレーを作っていました。
ソウルメイト / 馳 星周
(集英社文庫)
犬・暮らし・責任
人と犬は言葉を交わせなくても、深く心を通わせることができます。余命を知り最期の時を穏やかに過ごすバーニーズ・マウンテン・ドッグや、母の遺した柴犬を福島で捜す物語など、愛犬と生きる喜びも別れの哀しさも包み込む、温かな家族小説です。
本書は、インターネット上で広く知られる詩「犬の十戒」をもとに描かれています。「分厚いけれど区切りのいいところまで読んで眠ろう」と思って読み始めました。ところが気づけば、涙でページが滲むほど夢中になっていました。
犬種を知っているからこそ「これは無謀では」と感じる場面もありましたが、それ以上に、犬そのものへのまなざしや、飼い主としての躾の大切さ、命を預かる覚悟が伝わってきます。読み終えたあと、犬と暮らすということの重さと温かさが、じんわりと胸に残りました。
タルト・タタンの夢 / 近藤 史恵
(創元推理文庫)
フランス料理・料理人・謎
小さなフレンチ「ビストロ・パ・マル」は、寡黙な料理長・三舟 忍と副料理長の志村、ソムリエの金子、そして新人ギャルソンの僕が働く店です。家庭的なフランス料理を愛する客が集い、時に奇妙な悩みを抱えて訪れます。三舟は料理の知識と鋭い推理で、その謎を鮮やかに解き明かしていきます。
物語は “謎解き” というより、料理や食材の雑学が広がっていくような楽しさがあり、料理の描写が本当に美味しそうで、読んでいるとつい食べたくなってしまいます。
わたしの良い子 / 寺地 はるな
(中公文庫)
伯母・子育て・苦労
椿は出奔した妹の子・朔を引き取り、勉強が苦手で内向的な彼との生活に向き合います。無意識に「他の子」と比べてしまう自分に気づき、大人が言う「良い子」とは何かを問い直していきます。
表面だけをなぞれば、無責任な妹に子どもを押し付けられた気の毒な姉。そんな構図にも見えてしまうかもしれません。けれど椿にとって、妹の鈴菜も、甥の朔も、どちらもかけがえのない存在です。ふたりで過ごす日々には、小さくても確かな幸せが息づいていて、その温度が物語全体を柔らかく照らしています。
寺地 はるなさんの作品は、人間関係のざらつきや、どうしようもない状況に胸が曇る瞬間があっても、最後には必ず救いの光が差し込み救われます。
:漫画
アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり 15 / 荒井 ママレ
(ゼノンコミックス)
薬剤師・トランスジェンダー・災害援助
葵 みどりは勤め先である萬津総合病院の隣町で起きた水害を受け、避難所の公衆衛生を支えるボランティアとして現地を訪れます。そこには、壊れた日常を少しずつ取り戻そうと懸命に暮らす人々の姿があり、みどりは寄り添いながら支援を続けていきます。
15巻という長い物語なのに、読み終えると「あれ、もう終わり?」と思ってしまうほど、最初から最後まで医療というテーマに真っすぐ向き合ったシリーズでした。
そして最終巻を飾るのは、災害現場の避難所で奮闘する薬剤師たちの姿です。薬の配布や調達、衛生管理、生活環境の整え方まで、どれも欠かせない大切な仕事ばかり。混乱の中で人々の暮らしを支える彼らの存在が、どれほど心強いものなのかを改めて感じました。
ブスに花束を。 13 /作楽 ロク
(角川コミックス・エース)
高校生・喪女・恋愛
高校三年生になった田端 花と上野 陽介は、ボウリング大会のリベンジに挑みつつ、初めてのお家デートにも胸を高鳴らせます。さらに、鶯谷や五反田での初デート、大塚や新橋での新たな展開など、相変わらず全力で頑張る田端さんの姿が微笑ましく描かれます。
とくに夏がテーマの作品というわけではありませんが、爽やかな青春の空気が漂っているせいか、この季節になるとつい全巻読み返してしまいます。電子書籍なので続巻が表示されていて、13巻が発売されていることに気づきました。
七月のテレビアニメ化に合わせて、特別編が連載されていたようです。主人公の田端さんや上野くん、友人たちの過去やその後が描かれていて、まるで巻末のおまけをずっと読んでいるような楽しさがありました。

今月のおすすめは、
馳 星周さんの『ソウルメイト』です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。また、来月の記事でお会いしましょう!



コメント