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今回取り上げるのは、どれも長く読み継がれてきたシリーズ長編小説です。
発売から時間が経っている作品もありますが、いま読んでも夢中になれる魅力がぎゅっと詰まっています。
読みやすくて面白いのはもちろん、完結しているものや区切りのよいところまで描かれているものを中心に選んでいるので、安心して手に取っていただけます。
[合わせて読みたい]
蒼穹の昴シリーズ / 浅田 次郎
(講談社文庫)
中国・宮廷・宦官
清朝末期、貧しい家に生まれた李 春雲(春児)は家族を救うため自ら去勢し、西太后に仕える宦官となります。一方、義兄の梁 文秀は科挙に首席で合格し、光緒帝を支える変法派官僚として台頭します。后党と帝党の対立が深まる中、敵味方に分かれた二人は、揺らぐ清朝の中でそれぞれの信念を胸に懸命に生き抜いていきます。
『蒼穹の昴』は史実を土台にしたフィクションで、西太后をはじめ実在の人物が数多く登場します。だからこそ、どこまでが史実でどこからが創作なのか、つい調べたくなる奥行きがある作品です。
なかでも私の心をつかんだのは、架空の人物でありながらモデルを持つ春児でした。素直で健気で、優しさがにじむ青年。しかし、野心が渦巻く宮中で彼のような存在は本来きわめて稀です。それでも春児は、人に恵まれ、運をつかみ、少しずつ自分の道を切り開いていきます。
その過程には、困っている者を放っておけない彼の人徳が確かに息づいていて、読みながら会ってみたくなりました。中国史や政治劇としての見どころも豊富ですが、私にとっての中心はやはり春児の物語でした。
なお『蒼穹の昴』シリーズは第二部以降で主人公が変わるため、まずは第一部を読んでから続きを進めるかどうか決めるのが良いと思います。
図書館戦争シリーズ / 有川 浩
(角川文庫)
近未来・図書館・攻防戦
メディア良化法により創作物が検閲される中、図書館は自由を守るため図書隊を組織し、良化特務機関と対立していきます。正化26年、笠原 郁は図書隊員に救われた経験から入隊を志し、正化31年に念願の隊員となります。鬼教官・堂上のもとで厳しい訓練を重ね、全国初の女性隊員として仲間と共に困難な任務に挑み成長していきます。
本好きなら「こんな世界は嫌だ…!」と嘆きたくなる設定です。図書隊の訓練や戦闘シーンは迫力満点なのに、全体の雰囲気が殺伐としないのは、主人公の恋がとにかく初々しくて、読んでいるこちらまで赤面してしまうから。
私が人に説明するときは、つい「本を守る自衛隊みたいな話だけど、実質は甘酸っぱい恋愛小説」と言ってしまいます。
宮廷神官物語シリーズ / 榎田 ユウリ
(角川文庫)
宮廷・奇跡の少年・神官
麗虎国には「国が乱れると白虎に乗った奇跡の少年が現れる」という伝説が残っています。農村で忌まれながらもたくましく生きる天青は、額に石を宿すやんちゃな少年です。神官・瑛 鶏冠は密命を受け奇跡の少年を探しますが、その正体が天青だと知り驚きます。
榎田 ユウリさんの描く作品は、何より “人間を人間らしく描く” 筆致にあると思います。どの登場人物も個性豊かで魅力的で、視点を変えれば誰が主人公になってもおかしくないほどです。読み終えたあと、私は不思議な能力を持ち白虎を連れている天青ではなく、むしろ鶏冠こそが主人公だと錯覚してしまうほどでした。
レビューの中には韓国風の要素に抵抗を示す方もいましたが、私は韓流ドラマが好きなこともあり、まったく気になりませんでした。むしろ物語の雰囲気に自然に溶け込んでいたように感じます。
守り人シリーズ / 上橋 菜穂子
(新潮文庫)
ファンタジー・女用心棒・冒険
『精霊の守り人』から『天と地の守り人』まで、バルサとチャグムの歩みは、個人の成長と国家の運命が重なり合う壮大な物語として描かれます。バルサは一人の命を守る旅から、過去の清算や異国の少女の救出へと守る対象を広げ、やがて世界の均衡に関わる存在となっていきます。チャグムもまた、皇子としての孤独や葛藤を抱えながら、他国との交流や戦乱の渦中で未来を切り開いていきます。
私がこのシリーズを知ったのは、作者である上橋 菜穂子さんが国際アンデルセン賞を受賞したときの書店フェアでした。ファンタジーが好きなので軽い気持ちで一冊だけ買ってみたのですが、気づけば夢中になり、すぐに全巻そろえていました。
短槍を手に戦う女用心棒・バルサをはじめ、登場人物たちは皆それぞれの戦いを抱えています。国のために、誰かのために、そして自分自身のために。
壮大な物語でありながら、どの場面にも優しいまなざしがそっと息づいています。気づけば物語の世界に抱きしめられるような感動が広がり、読み終えたあともしばらく心が離れなくなる。そんな忘れがたい一冊です。
十二国記シリーズ / 小野 不由美
(新潮文庫)
十二国・王・麒麟
十二国記の舞台は、慶・奏・範・柳・雁・恭・才・巧・戴・舜・芳・漣の十二の国が幾何学的に配置された異世界です。各国は麒麟に選ばれた王が治め、王は天啓が続く限り不老不死で統治を行います。麒麟は宰輔として王を支え、その治世を導いています。
新潮社、講談社X文庫ホワイトハート、講談社文庫など、出版社を転々としていますが現段階で購入するなら新潮社の完全版ですね。
この作品は登場人物や時代、背景などが緻密に練られていて、物語やそれらを表現する文体には重厚感があります。男女・年齢に関係なく楽しめる作品だと思いますが、読書に軽さを求める方には向かないと思います。
そしておすすめの理由に、2019年に発売された『白銀の墟 玄の月』で、長く続いた(発端は『風の海 迷宮の岸』1993年)戴国編も決着を見せていることもあります。
私は慶国派なので我慢できましたが、戴国派の方は続きが気になって仕方がなかったと思います。発売が発表されたときは狂喜乱舞だったのではないでしょうか。
出版社や書店のフェアも大々的に催され、電車の中にも広告が貼っていてびっくり。やっぱり人気作だと窺えます。
新潮文庫では『魔性の子』が一番最初に紹介されているのですが、こちらの作品は『風の海 迷宮の岸』の後に読んだほうがより楽しめると思います。
まだ、『十二国』というシリーズとしては完結していません。
流血女神伝シリーズ / 須賀 しのぶ
(角川文庫)
拉致・皇子の身代わり・数奇な運命
猟師の娘カリエは見知らぬ男たちにさらわれ、病弱な皇子の影武者として幽閉されます。陰謀渦巻く宮廷で誰も信じられないまま、知恵と勇気を頼りに生き延びようとし、逃げ場のない運命に抗いながら未来を切り開こうとします。
角川文庫版の『帝国の娘』は、1999年に発売されたコバルト文庫の新装版は全二巻構成ですが、あくまで “序章” にすぎません。本編はコバルト文庫で 全22巻、さらに 外伝3冊・番外編2冊 が刊行されている、かなりの長編シリーズなんです。
私は電子書籍でコバルト文庫版を購入しました。表紙こそありませんが、漫画家の船戸 明里さんの挿絵がしっかり収録されていて大満足。ちなみに、角川文庫版には挿絵は付いていません。
過酷な運命を背負いながらも、恋に憧れて前を向き続けるカリエ。そんな彼女を取り巻く男性たちの想いが物語に厚みをもたらします。女神信仰という少し複雑な設定はありつつも、少女漫画のように軽やかに読み進められる作品です。
2021年にはコミカライズもされていて一定の認知度はあるようですが、角川文庫から続刊が出るのかどうかは、今のところまったく読めませんね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。また、次回の記事でお会いしましょう。





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