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恋愛小説が好きな人なら、一度は味わったことがあるはずの “胸キュン” の瞬間。
ふと息をのみ、次の一行を追わずにはいられなくなる。あの甘さと、ときめきと、少しの照れくささ。そんな感情をまるごと抱きしめてくれる作家といえば、有川 ひろさん。
まっすぐ心に刺さるセリフ、思わず笑みがこぼれる恋の駆け引き、そして読み終えたあとにそっと残る幸福感。
今回は、その魅力を存分に味わえる物語を選びました。
第1位 海の底 (角川文庫)
自衛隊三部作のひとつ『海の底』。この作品を説明しようとすると、つい「自衛隊の横須賀米軍基地で一般開放された桜祭りに、巨大なザリガニの大群が襲ってくる話」と言ってしまうのですが、本当に魅力的なのはその先です。
混乱の中、潜水艦に逃げ込んだ自衛官二人と少年少女たち。閉ざされた艦内で、彼らが少しずつ心を寄せ合い、支え合いながら日々を乗り越えていく姿がたまらなく良いのです。
その中で唯一の女性として登場するのが、17歳の森生 望。四年前に両親を事故で亡くし、叔母夫婦の家で暮らしていること。その出来事が原因で、弟の翔(12)は言葉を失ってしまったこと。さらに潜水艦の中では、粗暴なリーダー格の遠藤 圭介(15)の苛立ちの捌け口にされてしまうこと。彼女の背負っているものは、読んでいて胸がぎゅっとなるほど重い。
そんな望が、本来の自分を取り戻していくきっかけとなるのが、自衛官・夏木 大和。彼は誰に対しても飾らず、本音で向き合う人。普段の生活なら「距離が近すぎる」と感じるかもしれないけれど、閉鎖された潜水艦という極限状況では、その真っ直ぐさがむしろ救いになります。
本来なら、冷静沈着で頼りになる冬原 春臣のほうが私の好みのタイプなのに、望の視点で読んでしまうせいで、どうしても夏木にドキドキしてしまう。というか、この二人のやり取りがいちいち胸に刺さる。読んでいるだけで、望の心が揺れる音が聞こえてきそうなんです。
三部作ではありますが、この作品から読んでもまったく問題ありません。もし『海の底』を読んで「彼らのその後が知りたい」と思ったら、ぜひ『クジラの彼』へ。あの閉鎖空間で芽生えた絆の “その先” が、そっと描かれています。
第2位 県庁おもてなし課 (角川文庫)
高知県庁の若手職員・掛水が、新設された「おもてなし課」で奮闘するお仕事小説。その中で、私がどうしても目を奪われてしまうのが、観光特使として登場する人気作家・吉門 喬介です。掛水が迷ったとき、吉門は時に厳しく、時に寄り添う言葉を投げかけ、物語の軸を支える存在として描かれています。
そして、特に惹かれたのは、彼の恋愛にまつわる不器用さでした。普段はスマートで落ち着いた大人の顔を見せるのに、恋となると急に臆病で後ろ向きになり躊躇ってしまう。
母親の再婚相手、義妹にあたる佐和への想いを胸に秘めながらも一歩を踏み出せずにいる姿に、気づけば主人公たち以上に彼の行く末を応援していました。
第3位 シアター! (メディアワークス文庫)
有川 ひろさんの作品はどれも魅力的で、未完のままの作品を紹介していいのか少し迷いました。けれど、迷ってしまうほど好きだという気持ちこそ大切にしたくて、思い切って書くことにしました。
物語は、小劇団「シアターフラッグ」を主宰する春川 巧が、劇団を続けるために芝居に興味のない兄・春川 司に300万円の貸し付けを頼むところから始まります。お金を貸す流れで経理を任されることになった司のリーダー気質が魅力的で、いざという時の判断力と行動力には惚れ惚れします。どんな場面でその手腕が発揮されるのかは、ぜひ本編で味わってほしいところです。
劇団員たちも個性豊かで、シビアな現実に向き合ったり、胸がきゅっとなる恋に振り回されたり、とにかく次々と出来事が起こるのでページをめくる手が止まりません。
高校の部活や大学のサークルの延長のような、わいわいとした空気が心地よく、読んでいるだけで劇団の中に混ざっているような気分になります。
二巻が発売されたのは2011年。三巻で完結する予定だったものの続報がなく、有川 ひろさんらしきブログで執筆断念を知ったときは、本当にショックでした。それでもどこかで「もしかしたら続きが出るのでは」と期待してしまい、まだ見ぬ三巻を想像しながら読み返すことが今でもあります。
恋愛ものが恋しくなると、やっぱり有川 ひろさんに戻ってきます。心がふっと温かくなる、私の “定番” です。




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