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新しい本に出会いたい。
そう思っているのに、気づけば何度も同じ本を読み返してしまったり、「いつかまた読み直そう」と心にしまっていた一冊に手が伸びたり、つい似たような物語を探してしまうことってありませんか。
これから紹介するのは、そんな私が “ずっとそばに置いておきたい” と感じている、大切な本たちです。好みは人それぞれですが、もしよかったら、あなたの本棚にもそっと加わる一冊が見つかりますように。
[合わせて読みたい]
海の底 / 有川 浩
(角川文庫)
巨大甲殻類の来襲・潜水艦・生活
桜祭りで一般開放された横須賀米軍基地が、突如海から現れた巨大生物の群れに襲われます。自衛隊員は逃げ遅れた子供たちと潜水艦に籠城し、米軍の爆撃計画や政治的思惑が交錯する中、救出に奔走する自衛隊や警察とともに、事件発生から収束までの六日間が多視点で描かれます。
有川 浩さんの自衛隊三部作、『塩の街』『空の中』『海の底』。「どれが一番好き?」と訊かれたら、私は迷わずこの作品の名を挙げます。
特に心をつかまれたのは、潜水艦に逃げ込んだ自衛官と少年少女が共に過ごす、あの数日間です。閉ざされた空間で向き合うことになった子どもたちは、一癖も二癖もあって、わがまま放題。
思わず「もういい加減にしなさい」と叱りつけたくなるような生意気さもあって、読んでいるこちらの感情まで揺さぶられます。
それでも自衛隊員たちは、ただ “大人” として子どもを扱うのではなく、一人の人間として真正面から向き合おうとする。その姿勢が、たまらなく好きなんです。
思春期にこんなふうに寄り添ってくれる大人に出会えたなら、きっとその後の人生の景色は少し違って見える。そんなことを静かに思わせてくれる物語でした。
※余談ですが、この話の後日談が『クジラの彼』に収録されています。
戸村飯店青春100連発
/ 瀬尾 まいこ
(文春文庫)
兄弟・東京・大阪
大阪の下町の中華料理店・戸村飯店の兄弟は正反対で仲が悪いです。要領の良い長男ヘイスケは東京で新生活を始めますが、地元に残った次男コウスケは部活や恋に励みつつ店を継ぐつもりでいます。ところが冬の日、彼の将来を揺るがす大きな問題が起きてしまいます。
「ごめんください、どなたですか?戸村飯店の兄弟、ヘイスケとコウスケです。おもろくってほんますみません。お入りください、ありがとう。」
(文春文庫 瀬尾まいこ『戸村飯店青春100連発』帯 引用)
最初は、表紙の帯に新喜劇のギャグが使われているのを見て、「大阪に住んでるからって、これで笑うと思ったら大間違いやで…」と少し身構えていたんです。
ところが読み始めると、その予想が気持ちよく裏切られました。めちゃくちゃ面白かったんです。狙った笑いではなく、日常の会話の中に自然とユーモアがにじんでいて、気づけば何度もツボに入ってしまいました。コウスケの家に遊びに来た北島くんとのやり取りは、読むたびに頬がゆるみます。
瀬尾 まいこさんの本の中で、いちばん大切にしているのが『戸村飯店青春100連発』です。
キネマの神様 / 原田 マハ
(文春文庫)
映画・ブログ・批評対決
39歳独身の歩は突然会社を辞めて無職になりますが、映画とギャンブル好きの父が倒れ、借金まで発覚します。そんな中、父が雑誌「映友」に歩の文章を投稿したことをきっかけに、歩は編集部に採用されます。さらに父の映画ブログを始めることになり、ふたりに思わぬ奇跡が訪れます。
この作品を表すなら、「好きなものを追いかける人の強さと愛おしさ」。好きだから続けられるし、好きだから夢中になれる。その気持ちがじんわり伝わってきて、読んでいるこちらまで前向きになれます。
紹介されている映画は古い作品が多く、ほとんど知らなかったのですが、『ニュー・シネマ・パラダイス』だけは観たことがあって、その一点が『キネマの神様』をぐっと身近に感じさせてくれました。
静かな時間と動きのある時間が自然に溶け合っていて、読み終えたあとには、いい映画を観たあとのような心地よい満足感が残ります。
神去なあなあ日常 / 三浦 しをん
(徳間文庫)
山奥の村・林業・神事
平野 勇気は進路未定のまま神去村の中村林業に就職させられ、過酷な山仕事に苦戦しながらも自然の美しさに惹かれて成長していきます。美人教師・直紀への恋に奮闘しつつ、48年に一度の神事オオヤマヅミにも参加することになります。
神去村には、過疎や林業のなり手不足といった現実的な問題がありますし、よそ者を簡単には受け入れない村人もいます。そんな環境の中で、彼をかばう中村班の姿には、思わず “仲間っていいな” と感じさせられる温かさがあります。
そして、神去村という名前の通り、この村ではどこか不思議で神秘的な出来事が、まるで日常の延長のように起こるのです。
ローウェル骨董店の事件簿
/ 椹野 道流
(角川文庫)
ミステリー・イギリス・兄弟の確執
第一次大戦直後のロンドン。検死官デリックは左目と心の傷を抱え静かに暮らしています。従軍拒否で疎遠になった兄デューイや、幼なじみの刑事エミールとの関係に揺れる中、貴族令嬢の女優ヴェロニカ殺害事件に関わることになります。彼女が握った貝ボタンが、兄弟の再会と真相への扉を開きます。
ジャンルとしてはミステリーなのですが、「ああ、そう言われればそうかも」くらいの軽いタッチで、本格推理とは少し違います。
でも、この作品の良さはそこじゃなくて、やっぱり登場人物の描き方なんですよね。読んでいると、まるでアニメを観ているみたいにキャラが動き出すんです。
しかも今回の表紙が、物語のイメージと本当にぴったりで、読みながら情景がすごく浮かびやすかったです。
下妻物語 / 嶽本 野ばら
(小学館文庫)
ロリータ・ヤンキー・友情
四方八方田んぼが広がる茨城県下妻で、ロリータ服を愛する桃子は、お洋服代を稼ぐために始めた個人販売で、時代遅れのバリバリヤンキー少女・イチゴと出会います。見た目も趣味も正反対の二人は、最初はわかり合えるはずがないと思いながらも、次第に不思議な友情を育んでいきます。
ロリータ少女がヤンキーをじっと観察して、淡々と放つ辛辣な感想が妙にクセになります。本人はただ思ったことを正直に言っているだけなのに、どこか人を食ったような可笑しさがあるんですよね。
一方のヤンキーは、可愛げのあるおバカさん。行動は短絡的なのに、妙に憎めない。ロリータ少女にお礼として特攻服を贈ったときなんて、思わず「いや、本当に要らないな」と笑ってしまいました。
どちらも “我が道を行く” タイプで、現実では絶対に関わりたくない類いの人たちなのに、二人のやりとりを見ていると、少しだけ羨ましくなります。他人同士なのに、妙に噛み合ってしまうあの空気感。ああいう関係、ちょっといいなと思ってしまいます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。また、次回の記事でお会いしましょう。





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