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『本は日常』にご訪問ありがとうございます。
ところで皆さんは、上橋菜穂子さんという作家を知っていますか?
私は本屋に貼ってあった2014年国際アンデルセン賞の宣伝ポスターを見て初めて知りました。
失礼ながら上橋菜穂子さんの写真を見て、こんなおばちゃんが描く作品は説教ぽくて古臭いのでは?と思ったのですが、とんでもない見込み違いです。
全ての作品において言えることなのですが、壮大な物語の中で登場人物が懸命に生きる姿は人として成すべきことを自然と気づかせてくれます。
そして新しいとか古いとかとは関係なく、上橋菜穂子さんならではの世界がありました。
第一位 精霊の守り人 (新潮文庫)
「精霊の守り人」というかシリーズを通してですね。以前にもおすすめしたことがあるので、主人公である女用心棒・バルサの記事はこちらをお読みください。
そして、このシリーズには欠かせない二人の魅力的な男性が登場します。
まず一人目はバルサの幼馴染で森に暮らすタンダ。小説の中では二人で食事をしたりバルサの傷を治したり甲斐甲斐しく世話をするつれあいのような存在です。
バルサとタンダは小説ではっきりと夫婦と書いているわけではなく、子供ならスルーしてしまいがちな二人の関係に胸がときめきました。
バルサが窮地に陥ると、タンダが何もかも放り出して助けに来るのが容易に想像出来るのが良いです。
二人目はチャグム。バルサに出会ったころが11歳で最終巻では18歳まで成長しています。実の父親に精霊の子を体内に宿した不吉な存在として殺されそうになりますが、バルサのおかげで無事に解決し真っ直ぐに育っていきます。
「精霊の守り人」後のシリーズにも度々登場し、ときには主役をもこなします。
※チャグムの主人公の場合は、題名が「守り人」ではなく「旅人」に変わります。
聡明で利発だからこそ次代の王として苦しむことになるかもしれませんが、バルサやタンダの居る国を守り立派な王になる予感しかありません。王と民となり会えなくなってしまった二人と、いつか再会して欲しいです。
物語は王道な気もしますが、それがまた面白いのです。
第二位 鹿の王 (角川文庫)
女性主人公の多い上橋菜穂子さんの作品の中で、男性が主人公の「鹿の王」です。
この物語は恐ろしい病である黒狼熱を宿すキンマの犬が何のために人々を襲い、どんな術を持って黒狼熱から助かるのかが主筋なのですが、それだけではありません。
妻子を亡くし生きる意味を見出せないヴァンがみなしごのユナを育て、偶然出会ったトマらの家族に愛情を感じることで再生していく物語でもあります。
トマの母親の季耶に向けたヴァンの台詞に「この人は身内だ。もはや身内なのだ…。」というのがあるのですが、ここがグッときました。ユナから始まって大切に想える人々が増えていくことに、ヴァン、良かったねぇ…と声を掛けたくなります。
ヴァンばかり書いてきましたが、この作品は医師のホッサルとのダブル主人公です。黒狼熱の生き残りとして追われるヴァンと黒狼熱を解明しようとして追うホッサル。
頭が良くて冷静、ときに地位や医師のせいで尊大に見えるのですが、心を許した相手に見せる態度が意外にも生意気な子供みたいで憎めません。
この物語に登場する想像上の鹿の仲間、飛鹿(ピュイカ)が可愛いすぎます!
第三位 香君 (文春文庫)
最後は「香君」です。人並み外れた嗅覚で植物や虫が発する香りの声を聞くアイシャが、人々の飢餓を救い、国同士の争いを防ぎます。
この作品を選んだのは完成度の高さです。実のところアイシャが上橋菜穂子さんの作品の中で最も思慮深くて賢いと思っています。
「精霊の守り人」のバルサみたいに短槍を振り回すわけでもなく、「鹿の王」のヴァンみたいに飛鹿に乗れるわけではないので動きが無くて地味に感じるのですが、着実に根回しをし権力者をねじ伏せる様は執念さえ感じます。
また、植物や虫の描写が圧巻で鳥肌がブワッと立ちます。虫嫌いの人は気をつけて下さいね。
いかがだったでしょうか?今回、紹介出来なかった作品も見所があるものが多いのでぜひ調べてみてくださいね。最後まで読んでいただきありがとうございました。
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